環境の変化に適応できない種は絶滅する

 過去20年間に、世界は劇的に変化しました。だれもが、携帯電話を持つようになり、どこにいてもインターネットにつながるようになりました。世界のGDPは二倍以上に増えました。そんな凄まじい変化の中で、かたくなに変わらないものが2つあります。

 大学の一方通行型講義と、大学卒業後、企業に就職するという生き方です。どちらも、あと10年もすると絶滅すると思います。ありとあらゆるものが、進化する中で、同じであり続けるものは、環境変化に適応できず絶滅するしかないのです。それが大自然の法則です。
 では、環境の変化に適応して生き残る種とは?大学の講義は、間違いなく「コーチング主体型講義」になります。大学卒業後は、一つの企業に自分の人生をゆだねるのではなく、同時に複数の仕事に打ち込んで「自分もハッピー、他の人もハッピー」という仕事をするようになります。

人と違うからこそ、価値がある 

 伝統的な一方通行型講義の最大の特徴は、一人の教師が、生徒・学生に対して、同じ情報・知識を一方的に伝えることにある。全員が同じ情報・知識を受け取り、同じ答えを導き出すことが求められる。この繰り返しによって、同じ思考・態度・行動が徹底的に刷り込まれ、受動的学修姿勢が育まれる。
 かつて、中学3年生を対象とする模擬講義を担当した際に非常に驚いたことがある。そこに来た中学生に、次のような質問をしてみた。「絵具箱を渡されて、自由に絵具を組みあわせて、自分の色を創りだしなさい、という課題が出されたらどうする?」その答えは「周りの人を見て、周りの人と同じ色を創ります」というのだ。人と同じで目立たないように気を使い、本来、だれもがもっている自由で伸び伸びした発想を押し殺さなければならない中学生が可哀想に思えてならなかった。
 「グローバル世界では、多様性・異質性、しかも『異能・異端の人』、『ユニーク』であることなどが、大きな価値と可能性を持つ」(黒川清教授)といわれている中で、まったく逆方向の教育が行われていることに驚愕した。

有名な「ゆで蛙」現象から学ぶ

「水が入った鍋の中にカエルを入れる。ゆっくりと水の温度を上げるが、カエルは変化に気づかない。跳び出すこともなくカエルは熱湯の中でゆで上がってしまう」

この話から得られる最も大切な教訓は、「環境の変化を認識しなければ、生き残れない」。さらに、もう一つの大切な教訓は「変化を認識しただけでは、生き残れない。適切な行動が不可欠」になるのです。
 21世紀は変化の激しい時代。高齢化、グローバル化、科学技術の飛躍的発展。22世紀の歴史家は、21世紀を「人類が史上最大の変化を経験した時期」と振り返るでしょう。変化に気づかなければ、適切に行動できなかったカエルと同じ運命を私たちも辿ることになります。しかし、私たちはすでに変化には気づいています。そこで大切なのが、適切な高度です。
 適切な行動とは何か?20世紀の行動様式では、生き残れません。21世紀の行動は、「Fail fast, learn a lot.(素早く失敗し、たくさん学ぶ)」。そこでのリーダーの役割は、collaboratorとfacilitator。

パワー・ライティングの極意は、失敗の数々にある

 BOPビジネス研究のリサーチ・アシスタント募集の締め切り後に、北海道大学4年生の方から、応募のための履歴書をいただきました。締切り後の応募でしたから、通常であれば相手にせずにおしまいです。
 しかし、今回は違いました。履歴書に目を通して、感動しました。人の心を動かすパワー・ライティングのお手本が、そこにありました。即、採用です。多くの若者の文書に目を通す機会がありますので、それほど感動することはないのですが、今回はとっても感動させてもらって有難かったです。
 このことを通して、あらためてパワー・ライティングについて考えました。人の心を動かす文章、心を揺さぶる文章。そのコアには、人の共感を、どの程度よべるかどうかがあります。では、どういったことに一番共感するかというと、数々の失敗を乗り越えて、一生懸命、前進しようとする姿でしょう。
 失敗を糧にして、その後の成長にどのように結び付けてきたかで、共感の度合いが異なってくると思います。逆に人の成功は、うらやましいと思うものです。その陰にどれほどの努力があったかには思いをはせず、成功だけをみて、うらやましがるという性癖を人間は持つ傾向にあるように感じます。
 失敗は多ければ多いほど、素晴らしい。失敗は大きければ大きいほど、素晴らしい。失敗はいけないと洗脳してきた日本の伝統的な教育の在り方は、グローバルには通じません。おたがいさま、いつもグローバル志向でいきましょう。明るい未来は必ず拓けます。失敗は素晴らしい。

グローバル・プレゼンの5要件

 シリコンバレーの著名ベンチャーキャピタリスト、アニス・ウッザマン氏のパワー・プレゼンテーションを昨日、聴いてきました。さすが、シリコンバレーで鍛えられています。内容、形式ともに、ほぼ完璧なグローバル・インパクト・プレゼンテーションでした。

1.プレゼンの目的・ゴールがはっきりしている。つまりキーメッセージが明確。
2.スライドがすっきりしている。文字・写真・図表が盛りだくさんで、目が回るスライドを作らない。
3.結論を最初に言う。つねに、大切なことを最初に言う。
4.ピンマイクを使って、全身でプレゼン内容を表現する。片手がふさがる棒マイクは使わない。
5.プレゼン資料を配らない。どうせ終了後に捨てられるのです。紙資源を大切に。地球にやさしいプレゼンを。

日本には我流プレゼンが蔓延

 日本型ドメスティック・プレゼンテーションの特徴は3つ。その一、プレゼンの目的・ゴール(到達点)があいまいで、結局、何を言いたいのかがよく分からない。キーワード、キーメッセージが不明確なのです。
 その二、文字・イラスト・写真満載のスライドを次から次へと見せて、聴衆の目を回らせる。あげくのはてに、「分かりにくいスライドですみません」と謝る。それを自分で分かってんだったら、そんなスライド出さないでね。
 その三、結論を最後に言おうとするので、途中で時間が足りなくなって、結局、最後の一番大切な所に使う時間が足りなくなる。「時間の関係で、、、」と言い訳する。単に時間配分がうまく出来てないだけでしょ。

 ではでは、世界に通じるグローバル・プレゼンテーションの特徴は?もちろん、ドメスティック・プレゼンの反対をやればいいだけです。まず、プレゼンの目的・ゴールをはっきりさせる。目が回らないスライドを作る。結論を最初に言う。たったのこれだけ。

 今年もたくさんの我流プレゼンをみせていただく中で、唯一感動したグローバル・プレゼンは、黒川清先生(元東大医学部教授、元東海大学医学部長、政策研究大学院大学教授)のインパクト・パワー・プレゼンでした。本物を手本に、真似をしよう。

「国際経営学者」の3つの視点

 今日から9月。札幌には秋の気配がひっそりとしのび寄る。2013年の3分の2はすでに過ぎ去り、残り3分の1。この4か月、行動する「国際経営学者」として全力疾走します。
 「国際経営学者」の視点は3つ−グローバル、ビジネス、アカデミック。つまり「グローバル」の視点とは、自身の思考、態度、行動が「世界に通じるか?世界からはどうみえているか?」と問うこと。「ビジネス」の視点は、「効率的か?あるいは革新的か?」とすべてを見直すこと。「アカデミック」の視点とは、日々の表層的な動き・現象の根底にある「本質を常に探究」すること。
 そして目指すは、個性輝く若者を一人でも多く世に送りだすこと。「個性を輝かせる」とは、「人との違いによって他の人の役に立つこと」。他の人に役に立たなければ、単なる変人かな。