人と違うからこそ、価値がある 

 伝統的な一方通行型講義の最大の特徴は、一人の教師が、生徒・学生に対して、同じ情報・知識を一方的に伝えることにある。全員が同じ情報・知識を受け取り、同じ答えを導き出すことが求められる。この繰り返しによって、同じ思考・態度・行動が徹底的に刷り込まれ、受動的学修姿勢が育まれる。
 かつて、中学3年生を対象とする模擬講義を担当した際に非常に驚いたことがある。そこに来た中学生に、次のような質問をしてみた。「絵具箱を渡されて、自由に絵具を組みあわせて、自分の色を創りだしなさい、という課題が出されたらどうする?」その答えは「周りの人を見て、周りの人と同じ色を創ります」というのだ。人と同じで目立たないように気を使い、本来、だれもがもっている自由で伸び伸びした発想を押し殺さなければならない中学生が可哀想に思えてならなかった。
 「グローバル世界では、多様性・異質性、しかも『異能・異端の人』、『ユニーク』であることなどが、大きな価値と可能性を持つ」(黒川清教授)といわれている中で、まったく逆方向の教育が行われていることに驚愕した。