小さな一歩を積み重ねる

 東日本大震災の惨状を目にする時、あまりの悲しさに言葉がありません。苦しみ悲しんでいる方々と心を一つにして復興に向けて尽力したいと思います。私達BOPスタディー・ツアーのグループ一行が、バングラデシュにちょうど到着したころ、日本で凄まじい地震が発生しました。ダッカの空港から直行した農村の研修施設に到着した時、日本が大変なことになっていると言われましたがピンときません。しかし、変わり果てた景色がテレビに映し出されたのを見たとき、愕然としました。
 全国21大学から23名の学生が参加した今回のスタディ・ツアーでは、半数以上が体調を崩すという過酷さでした。しかし、なんとか全員が予定通りに帰国できて、実りの多い機会となりました。出発が一日遅かったら中止になるところでしたが、幸運にも出国できて、予定通りツアーを続けられましたので、この幸運に感謝して、今回のツアーから得られた成果を、これからの日本に役立てていく使命があると思います。バングラで貴重な経験が出来てよかった、というところにとどまるのではなく、そこで学んだこと、考えたことを日本で実践に活かしてこそ、今回のスタディー・ツアーが意義をもちます。
 農村には3日間宿泊し、この間に、幾つもの村を訪ねました。電気がなく、トイレもないという最貧の村を訪ねて、そこの人たちの話を聞き、一生をこの村で終わるという人生を想像した時 、言葉がありませんでした。貧困は、所得の金額では定義できません。ほかに選択肢がない、という状態が貧困です。選択肢がないということは、希望がないということです。その村の若いママさんが言っていました。これまでに一回だけ映画を観に行ったことがあると。
 地震に襲われた方々も選択肢がない状況、希望がない状況に置かれていると思います。この苦しみを日本人すべてで共有し、被災地の復興を成し遂げていきましょう。選択肢がないという貧困の状態がどれほど悲惨かを忘れることなく、日本からも世界からも貧困をなくすための小さな一歩を積み重ねていきたいと思います。