最新の知見を得られる場になったBOPビジネス・ワークショップ

 昨日の第5回BOPビジネス・ワークショップは、会場一杯の方々で熱気ある2時間を過ごさせていただき、とっても勉強になる時間でした。
 まず、木村亮介氏(PricewaterhouseCoopers Co., Ltd)が、実際に英国でBOPビジネス支援プラットフォーム(Business Innovation Facility)創りに携われているので、その動向について話してくれました。このスキームでは、£3million(約4億2千万円)を使って企業を後押ししようとしているそうで、英国政府が本腰を入れていることが分ります。BOPビジネスというよりはInclusive business (両者の違いは別の機会に書きます)として、より進化するポイントを3つ挙げられました。(1)パートナーシップ、(2)カントリーフォーカス、(3)ドナー間協力です。現場からの知見だけに大変役立ちます。
 続いて、日本のBOPビジネス促進の陣頭指揮をとっている小山智氏(経済産業省)。経済産業省の本気度が伝わります。まだ始まったばかりの段階ですが、今後の展開をしっかりと見据えていて、非常によく勉強されていることが分ります。特に中小企業をいかにBOPビジネスへと後押ししていくか、これが大きな課題の一つであるという認識を共有できました。小田ポリグル会長が、中小企業の活路はBOPビジネスにあり、といつもいっていることと同じですね。しかし、日本の中小企業がBOPビジネスで成功するためには、かなりの工夫と仕掛けが必要です。
 最後は、大野泉先生(政策研究大学院大学)が、特に開発論の視点から俯瞰的に日英比較をおこない、全体をまとめてくれました。中でも、BOPビジネス・オーガナイザー育成の必要性を説かれていた点が着目されます。菅原には開発論のバックグランドがないので、開発論者の指摘は新鮮です。
 そして本当の最後に、予定になかったスペシャルゲストとして、柳平彬(やなぎだいら さかん)氏(グループダイナミクス研究所代表)が登壇。柳平氏は、グラミン銀行のユヌス氏の友人で、日本でもグラミン・ジャパンを設立しようとされている方です。先週、ドイツで開催されたグラミン世界大会にユヌス氏と一緒に出席して帰国したばかりのところをお越しいただきました。ユヌス氏の考え方、最近の動向、今後の方向性について、短い時間で簡潔にお話いただき、「中小企業・零細企業が、がんばる社会にしていく」というのがキーメッセージでした。グラミンは、これまで大企業とばかり組んでいるので、日本の中小企業とも組みたい、しかしそこでの課題がたくさんあるということが分ります。
 日本のBOPビジネスに関して、最新の知見と情報が得られ、キーパソンとのネットワーク構築が図れる場に、いつの間にかなってきました。このワークショップの意義を高く評価していただくようになったことは非常に有難いことです。菅原個人にとっても、最先端の状況を直接知って、新しい研究課題を着想することが出来るので、貴重な機会となっています。何事も「現場の声」が宝の山であることを再認識します。学者の机上の空論、ネット上の情報、論文ベースの研究を超えて、現実世界にインプリケーションのある研究成果を出すためには、多くの方々の声に耳を傾ける必要性を痛感します。ということは、BOP世界に住み込むことも必要なんですが、それは来年の課題ですね。