品のある新マネジメント思想の構築を目指して−BOPはやめよう 

言葉は人を表します。やさしい言葉使いの人、乱暴な言葉使いの人、知的な言葉使いの人。どんな話し方をするかで、その人が分かりますよ。だからは言葉とっても大切です。どんな言葉を使うかで、人生が決まってきます。明るい言葉、前向きな言葉、肯定的な言葉を使う人と、暗い言葉、後ろ向きな言葉、否定的な言葉を多用する人では、人生がはっきりと違ってきます。「言霊」という表現さえあって、言葉には魂や霊が宿っているとも考えられています。

 いま流行のBOPのBはbottom(底辺)を表していて、すごく嫌な言葉ですよね。貧困に苦しむ人たちを底辺と呼ぶなんて、上から目線のきわめて傲慢な言葉使いだと感じます。低所得の人々を顧客とし、さらにはパートナーとしてビジネスをとするという新しい発想ならば、その大切な顧客やパートナーの方々を底辺と呼ぶのはあまりにも失礼。この表現を最初に使ったのは、プラハラッド教授とハート教授の二人。ハート教授は、その後、Baseに変えましたが、プラハラッド教授は、いまだに、Bottomを使っています。これは、学者にありがちな性向で、頑として自説を変えないという狭量さと器の小ささの表れです。人間誰しも誤りはつきもの。間違っていたと気がついたら、すぐに変えるのが賢者です。Bottomは使いべきではないでしょう。品のある日本発の新しいマネジメント思想を構築する際に、BOPという言葉を使うのは、ふさわしくないと気がつきましたので、これ以後、菅原はBOPを使いません。

 以前からBOPに変わることばはないだろうかとずーっと考えてきたものの、名案がないままでした。「貧困層へのビジネス・アプローチ」=Business Approach to the Poor(BAP)ってのが、いまのところ、妥当かなあと思っています(ベストとはいえないような気がするけど)。そんなわけで、BOPはやめて、BAPを使っていこうと思っています。

 1998年にアメリカで着想されたBOPという概念に、ビジネスをくっつけて、BOPビジネスと読び始めたのは日本です。ですから、欧米の文献では、BOPは使われていてもBOP business という言葉は使わていません。私も初期の論文では、やはり英語文献に倣いBOPしか使っていませんでしたが、最近の論文では、意識せず、いつの間にかBOPビジネスという表現を使っていました。最初にどうして使い始めえたのかは分かりません。これを決定的に広めたのは、経済産業省が「BOPビジネス」という言葉を使い始めたからです。いずれにしても、「BOPビジネス」は、日本固有の表現です。

 品のないBOPビジネスという言葉使いは、もうやめにしてBAP(貧困層へのビジネス・アプローチ=Business Approach to the Poor)で行きたいと思います。他にもっと品のある表現を見つけたら教えてください。