1200回の講義からの教訓

 1993年に初めて大学の教壇に立ってから、あっという間に16年。途中2年間は外国での研究生活で抜けているので、正味14年。これで計算すると、少なくとも1200回は講義をしています。これだけ場数を踏んでいると、プレゼンのエッセンスを体得できます。
 そこで、プレゼン成功のポイント。第一に、開始直後の1分が最も大切。この間に、聴衆全体を見渡して、どの層に焦点を当てて話を進めるかを決めます。女性が多ければ女性向けの話題を、若者が多ければ若者向けのジョークを、おじさんが多ければ淡々とプレゼンします(日本のおじさんたちは、いつも苦味つぶしたような顔をして、決して笑おうとしないからね)。ターゲットを絞って、関心をひきつけます。
 第二に、10分ごとにわざと雑談を入れます。人間の集中力は、最長で15分。新しい展開を、どんどんつくっていかないと、あくびをされてしまいます。
 第三に、キーワード、キーメッセージを明確にして、言い切っていくこと。多少の誤解を恐れずに。どんなに、言葉を尽くして話したつもりでも、20%はこちらがまったく意図しないように受け取っています。これを気にしたら、残りの80%の支持を失ってしまうからね。
 要するに、聴衆をわくわく感動させ、具体的な行動へと向わせること。素人はあれもこれもとプレゼンに盛り込み、文字でびっしり詰まったスライドを使って自己満足しています。プロフェッショナルは、なるべく文字の少ないパワポ・スライドを使って、聴衆を笑わせ、その気にさせるのです。あなたは、どっち?