夏こそ世界を舞台に、脳みそに汗をかこう

 大学生の夏休みに一人でアメリカへ向い、初めてロサンゼルスの空港に降り立った時、心臓がバクバクしていました。ついに来たというワクワクする気持ちと、わぁー来ちゃったどうしようという不安が入り混じって、足が震えていました。以来、外国を旅することが病みつきになり、死ぬまでに世界中のすべての国を訪れるという目標に向って、あちこちへと出かけています。
 見たことのない光景を見てみたい、食べたことのないものを食べてみたい、会ったことのない人に会ってみたい。つまりは、すべてが好奇心。そんなわけで、大学でも「国際ビジネス」を専門の研究領域として、日本の企業が外国でどうやってビジネスをしているんだろう、外国の企業が日本に来てどうやってるんだろう、というようなことを研究するようになりました。
 そして現在は、「世界を舞台にガッポリ金を儲け、その結果として社会に貢献し多くの人々を幸せにする方法」について研究しています。要するに、その目的は「世界を舞台に、楽しく、おかしく、愉快に生きて、自分も他の人も幸せにしよう」ってことです。学生の皆さんに、「世界で実際に成功している企業と経営者」の物事の考え方や行動の仕方を学んで、その真似をしてもらうことが狙いです。
何事も最初の一歩は真似から始まります。しかもお手本は超一級じゃないと、お手本が悪ければ、いくら一生懸命真似して練習しても上達しません。「良いお手本を真似する」、これが成長の第一歩ですよね。
 外国を旅すると、考えられないようなことにしばしばぶつかり、広い視野と多様なものの見方をもてるようになります。驚き、感動、勉強の連続です。ケニアで出会った社長さんは、ベンツに乗ってやってきて、「私の妻は4人いて、2番目の奥さんは日本人です」と自己紹介してくれました。これが日本なら、彼は罪に問われて即刻、刑務所行きです。常識は、世界中でそれぞれに違うのだと知りました。インドネシアの島で、一人水上スキーを楽しんでいたら、ポケットに入れた財布が強い波に吹っ飛ばされて太平洋の底に沈みました。財布は一つ無くなっても大丈夫なように、常に複数用意すること。つまり、常にリスクを分散する重要性を身にしみて知りました。8月のサンフランシスコでは、Tシャツに短パンの人がいる一方で、コートを着ている人もいて、びっくり。他の人のことなんか気にしない、自分は自分なんだと、自分を大切にする姿勢を学びました。ジャマイカでは、何を聞いても相手の答えは、「No problem! (問題ないよ、まかせとけ)」。本当に大丈夫だと思っていると、後で問題大ありです。しかし、何事にも明るく前向きに向かっていくスタンス(いいかげんとも言えますが)は素晴らしい。カンボジアベトナム、インド、フィリピンでは、あまりにも貧しい人々の姿を目にし、日本に生まれた幸運に感謝するとともに、先進国に住む我々には世界のことを考える義務があるのだと実感。他のために自らを使っていく尊さの一端を知りました。
 そんなわけで、学生時代にしておくべきことを一つだけあげてと問われたら、「世界を旅しよう」ってのが答えです。この醍醐味は、やってみなくちゃ分からない。「お金がないからできない」って考える人と、「お金がないけど、どうやったらできるだろう」と考える人の2つのタイプがいます。できない理由を考えて、できない自分を正当化するのではなく、制約と困難を乗り越えて何とかやってやろうと考える人たちが、新しい時代を創ってきました。
 「お金がない、英語ができない、勇気がない」の「3ない人間」だから、世界なんか旅できない。じゃなくて、お金がなくても、英語ができなくても、勇気がなくても、脳みそを使えば世界は旅できる。一度しかない人生だから、狭い世界しか知らないで終わってしまうのはもったいないよね。世界を旅して脳みそに汗をかいて、大きく飛躍しよう。