みんな同じじゃ、ホントつまんないね

 どの人も似たり寄ったりの反応でがっかりすることがあります。これまでに経験した、その典型的例を3つほどあげましょう。

 この時期、札幌と東京を行ったり来たりしていると、東京では挨拶の時に必ずこう問いかけられます。「北海道はまだ寒いでしょう」と。10人中ほぼ10人が同じです。これに対して、「はい、まだ寒くて、寒くて、厳しいです」と答えることに決めています。本当はそうじゃないんですけど、何度も多くの人から同じような質問を受けるので、あれこれ話す気力をなくします。実際には、「いえ、いえ、東京よりはるかに快適です。家は広くて中はぽかぽか、街も広いし、食べ物は美味しいです」と言いたいところですが、多くの人は自分の住んできる所が一番だと思っているので、そんなことは決して口には出しません。自分は東京に住んでいるんだという相手の自尊心をくすぐるように努めています。どこまでも相手を立てることが大切ですからね。「北海道=寒い」っていう固定観念でしか考えられない人は、他のことに対しても固定観念というレンズを通してしか見ていないんだろうなと容易に推測がつきます。こういう人は、まったく面白みのない人だよね。

 学生の皆さんに、これは良い本だよと紹介すると、ほぼ同じような返答が返ってきます。これもまた、こちらが予期している同じ返答ばかりで、それ以上は何も話す気がしなくなります。「その本は、いくらですか」というものです。内容がどうかということではなく、値段が安いか、高いかってことに関心があるのです。本は値段じゃありません。安い本で手ごろに買えても、内容がたいしたことなければ(こういう本はかなり多いです)、結局は時間、お金、読むエネルギーの3つを無駄にすることになります。高くたって、それによって、その後の人生に影響を与えるような内容なら、数千円だってちっとも惜しくはないよね。値段のことばかり気にしていると、貴重なチャンスを、どんどん逃していくのです。もっとも、本人はそのことには気がついていないでしょうけどね。おそらく学生の皆さんは、大学の教科書は値段が高い上に、こむずかしい事が書いてあって、役にも立たずに面白くない、という固定観念に取り付かれてしまっているので、素直に進められる通りに本を買うなんてことはないんでしょうね。

 「とにかく旅に出よう。世界は広いのだから、ちっぽけな世界を飛び出して、広い世界に挑戦しよう」と、機会あるごとに言っています。これに対する返答も、大体同じ。10人中8人が、「お金がない」と。もうそれ以上は、何も話す気がしなくなります。何をするにも、「お金がない、お金がない」と、出来ない言い訳ばかりをしている人はたくさんいます。こういう人は、自分で自分の可能性をつぶしている人で、もったいないなあーと思います。他方、お金がないけど、どうやったら出来るかを考えるって人が、可能性を拓いて行く人です。お金がなくても、世界を旅する方法はたくさんあります。でも多くの人は、固定観念に取り付かれてしまって、旅にはお金がかかる、だからお金のない自分は行けないって、思い込んでるんです。自分で自分の可能性をつぶす人と、可能性を大きく花開かせていく人の違いは、ほんのちょっとです。出来ない言い訳をする人か、どうやったら出来るかを考える人か。この少しの違いが、人生を大きく、大きく変えます。