砂漠に水をまき続ける、とにかくまき続ける

 きょうで、平成18年度の講義がすべて終了。無表情、無反応の学生を前に講義し続けることは、時に「砂漠に水をまいている様な感覚」におそわれ、とってもエネルギーが必要です。虚しさに襲われることもしばしばです。それでも自分はプロフェッショナルなんだからと言い聞かせ、自分を叱咤激励し続け、その結果として、最後の講義が終わった時に拍手があると、すべてが報われた気持ちになれます。砂漠に水をまき続けて良かったと思える瞬間です。きょうの講義の終わりに、受講生の皆さんから拍手をもらえて、平成18年度を締めくくることが出来ました。有難うございました。

 大学の教壇に立たせていただいて、あっという間に14年。拍手をもらえる時があったり、なかったり。時には花束をもらって、とっても感動することもありました。教育に携わっていると、直接的な結果がすぐには見えません。営業ならがんばった結果が営業成績という数字ですぐに出るでしょう。技術開発なら、やはり新製品という結果として目に見えてくるでしょう。ところが、特に大学での教育は結果がすぐには分かりません。ですから、熱意を持って一年間講義し続けるということはなかなか大変で、ましてや相手が何を言っても無表情、無反応では、時にやる気を失います。さらにどんな内容の講義をしても、給料もボーナスも始めから決まっています。がんばっても、がんばらなくても同じ。要するに、結果も分からないし報酬にも反映されないという、まったくやる気を起こさせないシステムになっています。

 こういう中で、学生の皆さんからもらう拍手だけが、がんばりの原動力です。最後に拍手をもらえるか、もらえないかに向かって、一年間やり続けるのです。そして、一年間ああだこうだと講釈を続けてきましたが、最後に伝えたいメッセージは一つです。どうせ大学で勉強したことなんて、ほとんど忘れてしまうんだから、以下のメッセージだけが伝われば結構です。

 大学で学ぶ理論理屈はもちろん大切だけれども、それ以上に、たった一回しかない自分だけの人生を、素晴らしいといえるようにするためには、「感動」「志」「行動」の3つが大切です。「感動」がない人生なんて、まったくつまらないよね。「志」がないと、いつしか自分のことしか考えないようになって、最近では不二家の例のように、自分の利益しか頭になくなって結局は失敗するのだ。そして「行動」。ソニーの創設者の盛田昭夫氏はこう言っています。「アイディアの良い人は世の中にたくさんいるが、良いと思ったアイディアを実行する勇気のある人は少ない。我々は、それをがむしゃらにやるだけである。」最後は行動さ。