未来が明るくなければ人は行き詰まる

 いつの時にもブームがあって、その時その時で流行っているものが変わります。大学生の卒業後の進路にも流行があって、いまは、介護・福祉業界がその一つでしょう。今後より一層高齢化が進むことは間違いないですから、成長市場として有望でしょう。しかし大学卒業後、介護・福祉の世界に進んで、生涯をそこで送るとするならば、相当の覚悟が必要だと思います。先まで見通すことなしに、一時的なブームに乗っかって、安易にこの世界に進むと行き詰ると思います。
 我が家のご近所さんに、シニアのご夫婦がいます。先日たまたま外で立ち話をする中で、二人だけの生活がかなり大変なことが分かりました。このご夫婦の場合は、ご主人の耳が遠くなって、体も自由にならないことの苛立ちから、奥様に暴力を振るうそうです。80歳を過ぎたおじいさんが、自分の奥さんに暴力を振るっている姿は想像するだけで、ぞーっとしますよね。家庭内暴力は、イライラのはけ口を自分よりも力の弱い者に向けるという人間として最低の行いですが、年老いていく中でどうにもならない苛立ちのはけ口が必要なこともよく分かります。そして、たいてい男は年を重ねると頑固になり、人の話に耳を傾けることがなくなります。その上、さらに現実と空想の世界を行ったり来たりするような状態になっていきます。
 高齢社会というのは、大変なことだと実感しました。こういう人たちのケアをしている介護・福祉の世界で働いている方がたは、決して高給というわけでもないなかで、大変な仕事をしているんだなと頭が下がる思いがしました。どういう使命感ややりがいをもって、毎日を働かれているのでしょう。
 赤ちゃんとお年寄り、どちらもオムツをしています。赤ちゃんには未来があり、日々成長していく姿を実感できますので、そのお世話は大変でも苦にならないでしょう。他方、お年寄りには大して未来も成長もないので、同じお世話でも気持ちの面で厳しいと思います。未来が明るく希望に満ちているならば、今どんなに辛くても乗り越えていけます。一番厳しいのは、明るい未来を見出せないということです。例えいま豊かであったとしても、明るい未来が見えないと精神的に行き詰っていきます。
 世界で例を見ない超高齢社会に突入していく日本で、どうやって未来に明るい光を見出していくかが最大の課題ですね。就職する際には、仕事の内容や待遇とは別に、その仕事に明るい未来、夢、希望を見出せるかどうかが重要なポイントになると思います。