名前はすごく大切

 シアトルに住んでいたときのことです。2歳の息子を連れて公園へ行くと、そこにやはり同じくらいの歳の子供をつれてきていたお母さんがいて、知り合いになりました。それから数週間後、今度は図書館の駐車場でばったり会いました。すかさず、彼女は息子の名前を呼び、明るく挨拶してくれました。こっちは名前を覚えていなかったので、名前で呼ぶことが出来ずに、負けたって気持ちになりました。
 アメリカ人は、初対面でまず名前を名乗り、それ以後、づーっと名前で呼び合います。彼・彼女らに抜群の記憶力があるとは思えませんので不思議なのですが、とにかく名前を覚えています。名前は、本人にとってとっても大切なもので、それを覚えておくということは相手に敬意を払っていることの表れです(逆に、どうでもいいやって思っている相手の名前って覚えられないんだよね)。
 あのときに悔しい思いをした菅原は、以後こっそり努力を重ね、記憶力が良くないので、財布の中に忍ばせてあるメモ用紙に会った人の名前を書いてあります。次に不意にあったときでも、名前で呼べるようにです。先日、友人と1歳の息子さんとばったり会ったとき、とっさに、その息子さんの名前で呼びかけました。もちろん相手は、名前を覚えていてくれたんですね、って喜んでいました。
 名前の大切さを教えるために、菅原の名前自体が良い教材です。学生に、担当教員の名前を書かせると、10人中4人ぐらいが、「管原(カンバラ)」って書きます。毎年、そうです。草かんむりと竹かんむりの区別が出来ていないのです。これがビジネスの世界なら、名前を間違えたら、それだけで以後、まったく相手にしてもらえません(なんとか相手にしてもらえるのは学生のうちだけ。それほど、人は自分の名前に愛着をもっているのです。
 菅原の場合は、毎年毎年、学生の中に間違う学生がいるので、大学生にしてこのレベルかって、かつてはがっかりしていましたが、今では、まあこんなもんさって完全に悟りを拓いていますから、どってことないですけどね。
 名前を記憶する、名前を間違えない、これって基本中の基本なのだ。