流れない水は腐る

 いたるところで「改革」が叫ばれてきましたが、総選挙に突入し、より一層その頻度が高まっています。大切なことは、改革の目的です。なんのための改革なのか。

 「改革」で忘れてはいけないことは、必ずそれにともなうプラスとマイナスがあるということ。プラスだけしか強調せず、マイナスをどのように埋め合わせるのかを説明しない(できない)人の話は、まやかしです。

 現在叫ばれている「改革」のエッセンスは、もっと市場の原理を導入し、より効率性を高め、限られた資源(人、モノ、カネ)でより一層大きな成果を得ようというものです。「市場の原理を導入する」というフレーズはかっこいいのですが、簡単に言うと、「競争を厳しくして、勝者と敗者を明確にする」ということです。一人の勝者の影には、必ずそれ以上の敗者がいることを忘れてはいけないのです。そして市場では白黒がはっきりつき、多くの敗者も生まれますから、社会の二極化が進みます。現在の日本では、かなりの分野ではっきりと二極化が進んでいることが分かります。簡単に言うと、金持ちと貧乏人にはっきりと別れて行っています。

 小泉首相のうまい演出によって、今度の選挙の最大の争点が郵政民営化ということにされてしまっていますが、これにだまされてはいけません。もっと大切でいま真剣に議論すべき課題は2つ。私たちはほとんどもらえないであろうと予想される年金と、財政破綻に瀕して近い将来に20%くらいまではあがると考えられる消費税です。郵政民営化なんて、それらに比べたら、私たちの生活に与える影響は小さく、ちっぽけな問題です。

 「改革」が強者の論理で進められては、必ず行き詰ります。親の跡を継いだ世襲議員やIT成金では、おそらく一般の民衆のことを心底は理解できず、「東京の論理」、「強者の論理」で、改革を進めるでしょう。うまい演出にだまされて、印象だけで政治家を選んでは、結局は自分達が困ります。

 「流れない水はよどむ」(=水は流れているからきれいであって、一箇所にたまっていると腐ってくる)という真理に照らすと、政権を握っている政党も、流れる水のように変わるからこそ、腐らないと思います。何でも長くやっていると腐るのです。(908字)