「知は力なり」は間違い

 「知は力なり」とは、フランシス・ベーコンの言った有名な言葉です。確かにもっともらしく聞こえるので、多くの人が疑うことなくそのまま受け入れてしまっています(おろかにも、自分も信じていました)。しかし、これは誤りです。「知識は行動に結びついて初めて力となる」のです。知識に裏打ちされた行動こそが重要なのです。ただ知っているだけの知識は、机上の空論です。

 大学の先生方が、それほど経済的に豊かでもなく(給料は大企業の部長並み)、社会的に影響を及ぼしてもいないのは(評論家・解説者としては登場しても実践者として活躍している人は少数)、「知は力なり」と信じて、ひたすら知識の蓄積のみに精を出しているからです。そして、自分で演じることをせずに、舞台の脇から、ああだ、こうだと講釈を並べているだけの、楽な商売をしているのです。

 こういう先生方が、若い柔らかな頭脳を持った学生たちに何かを教えるというのは、時に害を及ぼすと思います。大方の大学教員には創造性はありません。これまで創造性を求められることもなかったので、創造性が何かも知りません。にもかかわらず、これからの時代は創造性が重要だと、学生を前にしてもっともらしいことを言うのです。知識を行動に結びつける方法を、知っているわけもありませ(知ってたら大学の教員なんてやってないのです)。

 人は、歳を重ねると共に、身体も頭も固くなります。これは誰もが避けることの出来ない大自然の真理です。創造性が重要な時代には、身体も頭も固い大学教員の役割は低下します。主役は若者です。行動する、とにかくやってみる、そして失敗する、それでもまたやる、この繰り返しが大切です。この繰り返しが多ければ多いほど、自らの可能性を拓き、人生を豊かにすると思います。大学は単に知識を学ぶところではありません。行動するところ、挑戦するところ、失敗するところ、そこから知識を学ぶところです。行動、行動、行動。実践、実践、実践。(文字数:770字)