「80対20の法則」で世の中が見えてくる

 「優れた理論や概念は、それまで見えなかった世界を見えるようにしてくれる。それはあたかも闇夜を照らし出すサーチライトのようである」

 大学生のうちに、ぜひこの優れた理論や概念に少しでも多く触れて、それらがどういうものかを知ってもらいたいと思います。そして見えなかった世界が一気に見えて、感動に心を振るわせてください。こういう経験をしないで大学を卒業した人たちが、「大学の勉強なんて、社会に出てから役に立たないよ」と、後に続く学生諸君に説教じみた話をしますが、彼らは間違っています。彼らは大学時代に優れた学問に感動するという機会をもてなかった不幸な大人たちなのです。おかしな体験談に、惑わされることのないように注意しましょう。

 では闇夜を照らし出すサーチライトの一例として、「80対20の法則」を取り上げましょう。世の中を、基本的に80対20の比率で見ていくと、とても納得いくことの多いことに気づくでしょう。これは、イタリアの経済学者パレート(Vilfredo Pareto: 1848-1923年)が初めに言ったことです。私の経験では、どのクラスで教えていても、優秀な学生が全体の約20%います。本もエッセンスは、全体の20%に書かれていて、後の80%はページの水増しに使われています(だって本にするためには、ある程度のページ数が必要ですからね)。企業でよく言われていることは、「20%の営業マンが全体の売り上げの80%をあげ、残りの80%の営業マンが売り上げの20%をあげる」というものです。

 こうして考えると、大学の講義も20%が自分にとって興味深いものであり、残りの80%は当然面白くないのです(とはいっても、自分にとっての80%と、他の人の80%とは一致しません)。このことが初めからわかっていれば、大学の講義はつまらないのが多いと嘆く必要はないのです。それが法則どおりなのですから。出会う人も、20%が自分にとって有意義な人になるのです。サークルで何かをやろうとするときに、まとまりがなくて、非協力的な人がいても、全体の20%の人はそんなもんさと初めから分かっていれば、怒ることもなく、嘆くこともなく、冷静に物事を進めていけます。レンタルビデオ屋からビデオを借りてきても、10本中2本が感動する映画なのですから、つまらないビデオに金を使ってしまったと嘆く必要はありません。本だって10冊読んでも、8冊はくだらない、時間とカネの無駄だったと感じても、それが当たり前なのです。

 日本マクドナルドを創設した藤田田(でん)氏は、著書『ユダヤの商法』の中で「78対22の宇宙法則」について述べています。「正方形とこれに内接する円の面積の比率は78対22、空気中の窒素と酸素の比率も78対22、人間の体も、水分とその他の物質の比率は78対22となっている。儲けの法則も、78対22である」というものです。80対20を、より精密に分析した比率です。
 「80対20」で社会をみると、これまで見えなかったものが見えてくることに気づくでしょう。そしてそこから先は、あなた次第です。