ソーシャル・ビジネスとトラディショナル・ビジネスの融合が、BOPビジネス

 ユヌス著「Building Social Business」(2010年5月出版)では、ソーシャル・ビジネスの概念、考え方が詳しく説明されています。例えば、「ソーシャル・ビジネスの目的は、ビジネスの手法を用いて商品やサービスを提供し、社会的課題を解決することにある。(原著、p1)」、「投資家に元本を越えて利益が還元されるビジネスは、ソーシャル・ビジネスと呼ぶに値しない。(原著、p2)」
 ユヌス氏のソーシャル・ビジネス論のエッセンスは、「利益は一銭たりとも国外に持ち出してはならない」ということです。これまで、先進国にさんざん搾取されて貧困を作られてきた側からすれば当然です。
 しかし、先進国企業、特に中小企業は、これではなかなか進出できません。そこで、どうするか?当然、バングラディシュ国内で得られた利益は、バングラディシュに再投資するわけです。とはいえ、これではビジネスのうま味がありませんから、バングラ国外で利益をあげる仕組みを作り上げるのです。
 たとえば、先日のクローズアップ現代で取り上げた「雪国まいたけ」の場合はどうか?もやしの種をバングラでつくって、それを日本にもってきます。この段階での利益はバングラに落ちます。次に日本で種からもやしにして販売する際に、中国産の種よりも安価なバングラ産の種でもやしを栽培して販売するので、日本で利益が生まれます。このように日本で儲けるので、バングラでの利益は現地に還元できます。
 「日本ポリグル」の場合はどうか?こちらもやはり、日本で利益をあげるモデルを作り上げています。凝集剤PGαCa21が神戸港からバングラに向かって出荷される際に、この時点で出荷価格に利益が含まれていて、十分にこれで儲かるのです。だからバングラでの儲けから投資元本を回収したら、後は現地で再投資して事業を拡大すればするほど、神戸港で利益が出るのです。
 このように、ソーシャル・ビジネスと、通常のビジネスを組みわせた、相手もハッピー、自分もハッピーというのが、BOPビジネスなのです。これまでは考え付かなかったようなビジネスの組み合わせによって新しいビジネス・モデルを作りだす。これは、頭の固いおじさん達には不向きで、若者たちこそ大いに活躍できます。