2億円の人生と、やってみなくちゃ分からない人生、どっちを選ぶ?

 先週、卒業して10年になる卒業生の方が訪ねてきてくれて、学生を前に話をしてくれました。10年間勤めた会社を4月に辞めて、いまは、退職金をつぎ込んで、フィリピンで新しい会社を立ち上げる準備をしているそうです。10年たって立派に成長した彼の姿をみることができて、とても嬉しく思いました。
 これも先週の話ですが、3年前に卒業した中国からの女性留学生が、新しい会社を作っているところで、登記も済ませ、まもなく本格的にスタートすると聞きました。彼女は、非常に優秀ですが、多分日本の社会特有のいやらしい壁に阻まれて、これまで存分に力を発揮できなかったのだと思います。つまり、中国人、女性、2歳の子持ち、という3重苦(アメリカではまったく問題にならないのですが)によって会社勤めを諦めなければならなかったのです。しかし、彼女のすばらしいところは、それなら自分で会社を作ろうと行動したことです。
 この二人に心からのエールを送りたいと思います。これまでは、仕事は与えてもらい、それをこなして、対価として給料をもらうものであると、私たちは思い込んでいました。仕事は自分で作り、自分で稼ぐ、という生き方が、新しい選択肢の一つとして、現代の若者に与えられているということは素晴らしいことですね。
 初任給が20万円で、65歳まで働くと仮定して、生涯所得がいくらになるかを試算しますと(毎年順調に昇給して、ボーナスも出るという楽観的仮定)、約3億円です(60歳までなら2億5千万円)。このうちの3割くらいは税金や社会保障費で給料から天引きされますから、実質、手元に入ってくるお金は2億円ぐらいです。
この人生は、初めからシナリオが決まっています。大学卒業後に就職して、20代の後半で結婚。30代でローンを組んでマイホームを購入。その後は、ローン返済と子供の教育費にお金を使って、50代で子会社に出向。あとは定年退職まで大過なくすごして、無事引退。65歳からは年金生活。そして10年くらい自分のやりたいように人生を過ごして、あとは霊界へ旅立つ。
 このように大体始めから決まっている人生は、安定していてとても幸せです。しかし、これ以外に多様な人生の過ごし方が可能になっています。こんなことは、人類の歴史上、初めてではないでしょうか。士農工商の江戸時代に生まれていれば、生まれたときから自分の職業は決まっています。現在であっても、階級社会のイギリスに生まれていれば、階級の中で生きていくしかありません。
 たまたま、いまこの時に、日本に生まれているからこそ、いろいろな可能性があります。その幸せをよく知って、不平・不満に支配されて生きるのではなく、行動してチャレンジする人生を送ろうと言い聞かせています。(文字数:1080字)