今日の非常識を、明日の常識にしよう

現状に不満があると、私たちはどのような行動をとるでしょうか?経済学では、この問題を「声か退出」という捉え方をして、シンプルな解答を提示しています。つまり、選択肢は2つ。一つは、声を出して改善を要求する。もう一つは、黙って去っていくというものです。例えば、商品に文句があれば二度と買わない、お店に文句があれば次は行かない、会社に文句があれば辞める、というような行動です。

声に出すのはエネルギーがいるので、通常はいちいち文句など言わずに、だまって立ち去る(退出する)のです。そうすると、お店の場合は客が減って、これは何かが違うということに気づいて、自ら改善しようとします。でなければつぶれます。

問題は、声を出しても届かず、かといって退出も出来ない場合です。これまでの大学の講義は、このよい例でしょう。つまらない講義でも声の出しようがなく、かといって退出のしようもなく(退出したら単位がもらえない)、ただ黙ってひたすら耐えるしかありませんでした。ですから、まったく何も改善されず、毎年先輩から譲り受けたノートが役に立つというような状況が長く続いていました。しかし大学の危機が叫ばれる中で、大学も学生の声を聞こうという努力を払うようになってきました。さもなければ、多くの学生が退出してしまい倒産するからです。これはとってもよいことです。危機は人を動かしますから。

最後に残ったのは、国です。国に文句があって声を出しても、能力が低い政治家が多いのでしょうか、それとも政治制度が悪いのでしょうか、いずれにしても、どうも国民の声がとどいていないようです。では、もう一つの選択肢である、退出です。つまり日本を捨てて、外国に移住するのです。農耕民族の日本人には、外国で一生涯を送るということに本能的に抵抗があるようですが、日本からの退出という選択肢はかなり現実的になってきています。

今の日本の財政状況(毎年12月に発表される予算案)を見ると、毎月6万円の収入しかないのに、4万円を借金して、10万円の暮らしをしているということになります。4割を借金に頼っている生活がいつまでも続けられるはずはありません。若者たちは、消費税はやがて15%まであがるし、年金ももらえないことを知っています。将来に希望もなく、いくら政府が宣伝したところで年金に入るはずもなく、ニート対策が叫ばれても無気力から脱出できない若者が増え続けています。しかし、こうして声も出さず、退出もせず、ただ毎日を刹那的になんとなく過ごしていても、結局困るのは本人です。

声を出しても変らないのなら、もう一つの選択肢は、退出です。日本からどんどん優秀な国民や優れた企業が外国へ出て行ったなら、いよいよ日本にも倒産の危機が迫り、本気で変わろうとするでしょう。日本で一生を終わるという今日までの常識にとらわれずに、今日の非常識を明日の常識にしていきましょう。暮らしにくい日本から退出するのです。そのためには、やはり己を磨いて、世界で通用する自分へと成長する努力を重ねましょう。グローバリゼーションの恩恵を受けている先進国に暮らす私たちには、選択肢の幅が地球規模で広がっています。広い世界を舞台に生きたほうが楽しいにきまっています。

私は個人的には、ブッシュの率いるアメリカを70%嫌いで、30%好きです。嫌いなほうが多いアメリカですが、世界中から自分の国を捨ててやってきた人たちにチャンスを与え、活力ある社会を創っている点は、大いに尊敬しています。非常識を絶えず常識に実現し続けるパワーはすごいと思います。