4000円を高くするか安くするかは自分しだい

 スタンダードな経済学のテキストには、「価格による選別」という概念が紹介されています。つまり、意図的にある一定以上の価格をつけることで、それを払っても良いと考える人だけを選別するということです。よく取り上げられる例が高速道路の料金です。料金を意図的に高く設定することで、利用者を選別して、車の数を限定するのです。無料だったり安い料金では、多くの車が殺到して、まったく高速道路の意味をなさなくなってしまいます。そこで高い料金を設定して、それでも利用する価値があると考える人にだけ、利用を制限するわけです。価格の設定によって、質を保つのです。
 菅原が今年始めた新企画「一流・本物と未来を語る居酒屋懇親会」の会費4000円が高いという声が寄せられています。事実これであきらめた学生もいました。これは、最初から予想していたことで、それでもあえて4000円にしています(今後さらに上げることはあっても、下げることはありません)。
 理由は3つ。一つは、「価格による選別」です。学生にとって4000円は高いけれども、それでも参加したいという熱意ある学生だけを選別します。そうしないと、あまり問題意識もなく参加するというような学生も出てきてしまいます。お忙しい中に、本来なら招待すべきところを、自分の会費を払ってもらって、わざわざお越しいただくわけですから、参加学生のレベルが低いと一流・本物の方にとっても失礼になります。参加者のレベルを高く保つために、4000円はゆずれない最低価格です。
 二つ目は、自分の知っている世界よりもレベルの高い世界を知ることの必要性です。学生の飲み会の相場といえば、2500円くらいでしょうか。大きな皿に一緒に盛られて出てくる、B級品です。これはこれでいいのですが、たまには、そのワンランク上の、コースで一皿一皿料理が出てくるA級品の世界も知っておかなければいけません。何事も上のレベルを知っておくということが大切です。
 菅原は、学生時代に東京の一流ホテルのスィートルームを泊まり歩くということをしました。いまではどこのホテルに行っても、臆することなく常連ぶった顔で堂々としていられます。当時、帝国ホテルの1泊10万円というスウィートルームにも泊まって、こんなもんかと分かりました。といっても、貧乏学生に一晩で10万円は大金ですから、一流ホテルのスィートルーム泊まり歩きには、知恵が必要です。金がなくても知恵があればなんとかなります。その知恵が知りたいって?知恵は人からもらうものではなくて、自分でしぼり出すものです。
 4000円の3つ目の理由。私立大学の講義一コマ(90分)が、だいだい4000円です。単純に年間の授業料を講義のコマ数で割ったものですけど。つまり、大学の講義一コマと、一流・本物懇親会一回の値段は同じです。同じ値段で、おそらく一流・本物懇親会のほうがずーっと価値があると参加学生は感じるはずです。4000円のもとは十分にとれたと思うはずです。
 そこで、いつもコスト・パフォーマンスを考える癖をつけて、普段の4000円の大学の講義からでも、それに見合った成果を得られるように、もっと真剣に講義に臨んでもらいたいのです。講義から、もとをとったと満足して帰る学生は少ないのではないでしょうか。出席している学生の真剣さが低いと、講義のレベルは確実に下がります。4000円もする一回一回の講義から、最大限のパフォーマンスを得ていただきたいと思います。講義をする教員のレベルも確かに問われますが、それ以上に、受講生の姿勢が大切です。